【ユニマガ vol.6】まだ見ぬ夢を見るために

学生というのは当然ながら若い世代である。

どれくらい若いのかというと、今の大学4年生は1995年生まれ、大学3年生は1996年生まれ。すなわち我々は1993年のJリーグ誕生を知らない。鈴木大地スポーツ庁長官が金メダルを獲得したソウル五輪は、さらに前の1988年である。

我々が産まれてからの約20年間は、しばしば『失われた20年』と言われている。日本スポーツ界においてもこの20年は、経済規模でアメリカに大きく引き離された20年となった。

現在の興行収入は日本プロ野球の1400億に対し、米国MLBは1兆。実に7倍もの格差がある。ところが20年前は日米でほとんど変わらなかったというのだから、当時を知らない我々にとっては、もはや信じ難いレベルの話だ。

20年も経てばこの格差は常識となってしまった。

「稼ぐならアメリカ、だからアメリカに行きたい。」

カネと夢のデカさは同じだ。子供たちが、日本でプロ野球選手になるよりアメリカでメジャーリーガーになりたいと思うようになるのは当然のことである。昔に比べて日米間のプレーレベルの差は格段に小さくなったというのにも関わらず、だ。

カネと夢を同列に扱うなという人もいるだろう。

しかし、子供の夢は産まれた時代の常識に左右される。そしてその常識にはどうしてもカネが関わる。

つまりこれは単なる大人の欲望の問題ではなく、子供の夢の選択肢という最も純粋な話なのだ。だからこのカネの話から目をそらすことはできない。

私はアメリカのスポーツビジネスモデルが必ずしも正しいとは思っていないし、日本はアメリカのマネをすればいいとも思っていない。

ただこれだけは言える。”アメリカンドリーム"は今やアメリカ人だけのものではない。スポーツ界に限らず、アメリカで成功を収めたい人は世界中にいる。その中には多くの日本人もいるはずだ。

私が悔しいのは、アメリカで叶えられることが今の日本ではできないということ。本来アメリカでできることが日本でできないはずがない。それなのに今の日本では夢を見ることすら容易ではない。

繰り返しになるが、我々の世代の多くの日本人プレイヤーにとって、最終目標は海外でプロになることである。彼らの中には「日本で稼ぐ」という夢の選択肢を失った人が少なからずいる。

だからこそ、この夢を取り戻すため、我々がやらなければならないことは多々ある。

と同時に上の世代からは、日本に夢があった頃の話を教えていただかねばならない。

知らないものは学ぶしかないのだ。

(文章 慶應義塾大学3年 市川嵩典)

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